鋳造品

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ただ今、68yのミッションを脱着修理をしているのですが、このころまでのミッションケースはアルミ合金製の砂型鋳造品です。アルミの成型部品は大きく分けて鋳造とダイキャストに分かれます。

 ダイキャスト品の製造方案は冷却した金型に溶解したアルミ合金を瞬間的かつ高圧で鋳込みます。特徴としては溶解したアルミ材を冷却した金型で瞬間的に固めるのでポンこらポンこら製造でき大量生産に向いています。ただ、アルミ材は溶解している時と凝固している時は比重が違い固まると縮みます。ですので金型に鋳こんで急速に冷却し凝固させると中が巣だらけになります。よって歩留まりが悪いのとアルゴン溶接(TIG)が出来ず製品に欠けなどが発生しても修正がやりにくい、焼き入れができないのが特徴です。69y~の911のミッションケースの製造方案はこちらです。

 鋳造品は大きく分けてその方案が3つに分類されます。砂型鋳造(シェル鋳造)、重力鋳造(GDC),低圧鋳造(LPDC)です。複雑な形状なもの(シリンダーヘッドなど一部砂型も使用するもの)や少量生産なものは鋳造が有利です。

 砂型鋳造品は量産品の場合、300度前後に熱した金型にレジンコーティングサンドを吹き付け成型します。レジンコーティングサンドは樹脂が混じった砂で300度ぐらいで焼くと固まる性質を持った砂です。成型した砂型を組み立てて溶解したアルミ材を鋳込みゆっくりと固めます。特徴としては鋳肌が綺麗、設備投資が比較的少なくてすみますが作業工程が多い、砂を大量に使用するので粉塵等作業環境が悪いです。

 重力鋳造(GDC)は砂型を金型に置き換えたものです。鉄の金型に溶解したアルミ材を流し込んでも弾きますので(専門用語で湯嫌いと言いいます)金型表面をセラミックでコーティングします。GDCを一歩進めた方案が低圧鋳造(LPDC)です。これは低圧の空気を利用して溶解したアルミ材をゆっくり金型に押し込みます。指向性凝固と言いまして金型の冷却をコントロールしながらアルミを隅の方から湯口に向かって順番よく固め中に巣が出来ないようにします。特徴としては肉厚が薄い形状のものが鋳造できる、よって複雑な形状でも鋳造が出来るので設計に幅が出来ます。歩留まりも良いのが特徴で今現在の自動車メーカーが目指しているものと合致しますのでシリンダーヘッドの製造なんかでは主流です。

 ミッションケースやシリンダーブロックはダイキャスト製が生産性やコストからみても良いのでポルシェは手がかかる砂型品からダイキャスト製にシフトしたのでしょう。ただポルシェの場合、一部を除き77年までマグネシウム合金製にしたのは流石ですが。