ついでに焼入れの話

アルミ合金製の鋳造品は材質の機械的強度を上げる為熱処理したりします。焼入れと焼戻しです。簡単にご説明しますが興味のある方は専門書なんかで調べてください。

 アルミ合金などの合金は温度が高くなるほど原料金属元素同士が溶け合い易くなります(溶体化現象)。そこで製品(業界語では”ワーク”と呼びます)を溶けない程度に高温に加熱した後、急激に冷却すると溶け込んだ状態で原料金属元素同士が固まります。焼き入れです。実際は500度ぐらいの炉に入れて加熱しといて瞬時に水槽の中にワークを水没させて焼入れを行います。硬度、耐磨耗性が向上します。

 焼入れしたワークは高い温度から急に常温にされ原料金属元素同士はかなり無理な状態で結合していますのである程度元に戻ろうとします(時効硬化)。焼入れ後、ほったらかしていても2週間ぐらいで硬度が安定してくるのですが大量生産の工業製品の場合、ストックしとくわけにも行かないので人工時効硬化(焼戻し)を行います。再度加熱し(230度ぐらい)冷却します。

 焼入れ、焼戻しが適切に行われたかは硬度を測ることによって管理します。硬さの規格があり測定装置により数値で管理します。熱処理が終わった時点が一番硬度がでてまして後はゆっくり年月をかけて硬度が下がっていきます。

 国内の自動車メーカーは10年10万キロ走ることを想定して物作りをします。機械的強度を上げる焼入れ、戻したあとの硬度の数値はゆっくりと下降しますが10年後までは狙った数値に入っているよう設定しています。ですのであんまり年月がたつと車の部品は金属疲労も含めて機械的強度が足らなくなると想像できます。機械は出来たてが最高のようですが人間が使用するものだし旧い物には”味”が追加されるので旧いものは捨てがたいです。ピカピカに磨かれた古い鋳物は”味”がありますね。